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[ 2006-10-14 ]
ドキュメント

chapter 1.

* A : "trend-antique" の範囲 / "trend-antique" and its sphere.

* B : 近接ジャンルとの位置関係 / relation to adjacent genres

chapter 2.

* C : "trend-antique" の指針 / precept of "trend-antique"

* D : "trend-antique" の音楽生産 / system of production

* E : 上演と演奏会の指針 / precept of representation

chapter 3. : Surrounding.

* F : 推奨する環境 / Recommendation

* G : 雰囲気の演出 / To make an atmosphere

* H : オーディオのヒント / Audio & its tips

chapter 4. : Practice.

* I : 自分で演奏する / Self performances

chapter 5. : Comprehension.

* J : テクストと記憶 / Text and Memorization

* K : 批判的な諸方法 / Techniques of criticism

A. "trend-antique" の範囲

1. 作曲における範囲
各地方において革命が波及するまでの時期に、革命以前の発想で作曲された音楽です。最も中心となるのは次の時期です。
イタリア地方 : 1630年代の劇場の増加から、ロッシーニの初期まで。
オーストリア地方 : 17世紀半ばの音楽増強政策から、ハイドンまで。
ガッリア地方 : カヴァッリ来訪から、フランス革命勃発まで。
アングリア地方 : パーセルから、クリスティアン・バッハまで。
ゲルマーニア地方 : 30年戦争の復興期から、ヴェーバーの初期まで。
2. 演奏・制作における範囲
演奏においては、
フランス : 1980年代半ばのヤーコプスとクレマンシックから
イギリス : 1980年代半ばのガーディナーやロンドン・バロックから
イタリア : 1990年代初めのビオンディやアレッサンドリーニから
スペイン : 1990年代初めのサヴァールやバンゾから。
ドイツ : 1990年代半ばのコンチェルト・ケルンやベルリン古楽アカデミーから。
オーストリア : 1990年代のアルモニコ・トリビュート・アウストゥリアから。

B. 近接ジャンルとの位置関係

1. "クラシック音楽" ( 19世紀半ば〜現在 )
"クラシック音楽" は、フランス革命から第1次世界大戦までに作曲された音楽の一部を、19-20世紀の音楽論者が、自然淘汰説* に基づいて採り上げ、彼らの時代の音楽文化のルーツとして吟味した体系です。この体系への疑問提起から "古い音楽" へと向かう流れが生まれました。
2. "バロック音楽" ( 1930年代〜1980年代 )
バロック期からフランス革命までに作曲された作品のうち、19-20世紀と何らかの接点を持った一部の作品は、自然淘汰説* に基づいてクローズアップされ、"クラシック音楽" の体系の中で "バロック音楽" として採り上げられました。
* 自然淘汰説
自然淘汰説とは、社会が常に芸術作品を吟味し続け、完成度の低い作品、流行や体制に追従した駄作や凡作は忘れ去られる運命にあり、自分の時代にまで伝えられている古典作品こそが、真に完成度の高い傑作である、という考え方です。
3. "古楽" ( 1950年代〜現在 )
"古楽 ( Alte Musik ) " は、"バロック音楽" をより良く演奏しようと考え、オーセンティシティ* を研究しました。その結果として、"クラシック音楽" の考え方と方法論に対する様々な問題提起を行いました。一方、"音楽家" を中心とする姿勢を継承した点で、"trend-antique" とは異なります。
* オーセンティシティ
オーセンティシティとは、ある譜面に対して、楽器、演奏法、演奏状況などを、初演当時のそれに近づけることで得られる、その作品の音響の再現の忠実さ、を指します。しかし中には、そのようにすることが、"音楽自体の" より忠実な再現であると主張する向きもあり、問題となりました。
4. "初期音楽" ( 1960年代〜現在 )
"初期音楽 ( early music ) " は、"クラシック音楽" には含まれなかったルネサンス以前の多声声楽の体系と、その周辺にある民俗的な音楽に注目します。広義には、"古楽" の英訳ですが、その傾向には違いが見られます。考古学・歴史学的、中世的な古さへの関心に基づいている点で "trend-antique" とは異なります。
5. "ピリオド・アプローチ" ( 1980年〜現在 )
"ピリオド・アプローチ" は、"クラシック音楽" のメインレパートリーである作品を、オーセンティックな方法論を用いて演奏します。そのため、しばしば "モダン・ピリオド論争* " の種になりました。革命以後の芸術主義的な音楽を扱う点で、"trend-antique" とは異なります。
* モダン・ピリオド論争
モダン・ピリオド論争とは、"古楽" や "ピリオド・アプローチ" が、"クラシック音楽" のレパートリーに侵入した際に生じた、嗜好的な対立です。少数派である前者らは、理論武装として "オーセンティシティ" の議論を展開し、逆に、自身のイメージを混乱させることになりました。この論争はほぼ風化しました。
6. "trend-antique" ( 1980年代後半〜現在 )
"trend-antique" は、これまでの体系に含まれなかった革命以前の音楽を積極的に発掘し、オーセンティックな方法論を、スマートな現代性の中に再構成します。音楽の考え方では "音楽の消費 (商業性) " を中心に据え、優雅で洗練された様式による、聴き手主導の音楽を追究します。

C. "trend-antique" の指針

1. 非日常から日常へ
"trend-antique" の重要なテーマの1つは日常化です。優雅でシャープなスタイルが、カジュアルな生活の中で、新鮮なまま次々と "消費" されます。現代の生活の中に位置するために、涼しいサウンド、短時間でも楽しめる構成、強弱の平らな音響が求められます。
2. 演奏させる音楽への回帰
20世紀は、音楽を演奏すること、背景を理解すること、に価値を集中させた特殊な時代でした。一方 "trend-antique" は、技術と方法論の追究をプロフェッショナルに任せて、彼らに演奏をさせること、に重心を置きます。軽く聴き流すこともできるという負荷の軽さは、現代のニーズにも適合しています。
3. 求められる作品と接し方
"クラシック音楽" や "古楽" では、複雑で重く、より普遍的な作品を選び、音楽に神経を集中させて鑑賞してきました。しかし "trend-antique" では、流麗で軽く、趣味の良い作品が選ばれ、ただ耳を傾けながら、音楽を消費していきます。
4. 個性と意味
"trend-antique" は、音楽の個性にはそれほど強い関心を向けません。音楽家が勝手に独自な個性を強く主張し、意味合いに固執すると、趣味を損なう恐れがあるからです。しかし、流行の中での行き過ぎや、新しい流行を仕掛けることは、とても注目されます。
5. 作品群への大局的視点
"trend-antique" では、音楽家その人の、人生や人間性には関心が向けられません。特定の音楽家が創作した特定の作品ではなく、その音楽家の "作風" や作品群に注目し、安定して高いクオリティが提供できているかどうかを評価します。
6. 帰納的な体系
"クラシック音楽" の体系は演繹的に構成されていました。音楽に触れる前から特定の音楽家の重要性を前提として定め、それを検証する形で趣味が形成されていきます。"trend-antique" では、むしろ帰納的な視点のもとに体系を構築します。
7. 歴史考証との距離
"古楽" において基盤であった時代考証は、"trend-antique" では、あくまで素材として継承されます。つまり、古楽器や歴史的奏法は、作曲された当時の姿を再現をするヒントではなく、21世紀的なスタイルのサウンドを構築するヒントとして用いられます。
8. 商業的視点
"trend-antique" は、商業的な視点を大切にします。狭く小さなマーケットであるために、なおさら、収益性は重要な問題です。また、流行、見た目の美しさ、軽さ、便利さ、スマートさ、などに注目していきます。商業的視点からの吟味は、音楽の芸術的完成度をいっそう高めることになります。
9. 音楽家養成
"trend-antique" では、演奏と消費を明確に分け、必要な数だけの音楽家を職人的に養成します。生徒を必要以上に多数集め、授業料収入を音楽活動に当てる、という "自己目的" 的なビジネスモデルは避けられます。音楽家には、良い技術とセンスがあれば十分であり、天才的な芸術性は必須ではありません。

D. "trend-antique" の音楽生産

1. 主要3要素 - "作曲・演奏・制作 (プロダクション)"
trend-antique は3つの要素から成っています。それは、作曲・演奏・制作で、それぞれ、音楽の骨組みを考えて譜面にすること、譜面に肉付けして実際に鳴らすこと、鳴った音を機械で収録して美的コンセプトの中に収めることを行います。
2. 主要3要素が属する時代
"作曲" は遠過去 ( 現代以前の歴史 ) に属します。一方、"演奏" と "制作" は近過去 ( 現代 ) に属します。ただし将来的には、trend-antique の "作曲" が現代に行われる可能性も否定はできません。
3. 主要3要素の行為者
作曲は、"作曲家" が行います。テクストは "詩人" が書きます。演奏は、"歌手"・"器楽奏者"・"アンサンブル" といった現代の演奏家が行います。制作は、レコード会社のスタッフ・チームによって運営される "レーベル" が行います。
4. 主要3要素の関係と基本的な権限
trend-antique では、"制作" に全体を統轄する権限が与えられます。"制作" は "演奏" の要素を選択し、"演奏" と "制作" が共同して "作曲" の要素を選択します。将来的には、"制作" と "近過去化した作曲" が "演奏" を選択する可能性もあります。
5. "演奏" の "作曲" に対する権限
遠過去に作曲された作品は、もともと "演奏" に対して、作曲・編曲・変奏・音符装飾・カットの権限を委任していますが、著作権の消滅により、委任された以上の改変も可能です。そうした場合には "演奏" の要素が補完的な作曲を行います。

E. 上演と演奏会の指針

1. 想定される聴衆
聴衆は、自由が尊重される場であっても、無意味に大声で喋り立てたり、騒々しく騒音を立てたりしない人たちが想定されています。しかし、性向的問題のある方でも、プライヴェートな録音鑑賞や、一部の室内演奏会などで、trend-antique の音楽を楽しむことができます。
2. 劇場での商業的な上演
劇場は、互いに社交をして、人脈を築くために存在します。ゆったりと配された座席からは、自由に立ち歩くことができます。ボックス席では、適度に遮音をする扉を閉めることによりセミ・プライヴェートな空間が確保され、落ち着いた会話や飲食をすることができます。
3. 劇場での鑑賞のための上演
劇場作品は、大抵の場合、商業的な上演のために作曲されています。しかし、これらの作品でも、演奏会的に "鑑賞" をしたい、という方のために、"クラシック音楽" や "古楽" における劇場上演のような、鑑賞のための上演も行われます。
4. 教会での世俗的な演奏会
ヨーロッパ地方には、ヴィジュアル・サウンド的に優れた教会建築が存在し、そこでは、他では得られない効果のもとで、音楽が演奏されます。しかし、現代の多様性の中にあって、宗教からは政治色と信仰心が差し引かれ、単純に芸術的素材として用いられます。
5. 教会での宗教的な儀式
教会ではもちろん、信仰心のもとに、礼拝の目的でも公開演奏がなされます。キリスト教の各宗派は、無神論者や異教徒にも寛容である場合が多いのですが、それでも、政治色と信仰心にもとづく儀式であることに変わりはありません。
6. 室内演奏会
音楽を "鑑賞する" ために最も適しているのは、室内演奏会です。個人の邸宅の一室か、小規模なコンサートホールで行われます。ここでは、音楽に心得のある聴き手が、比較的内輪に集まり、静かに音楽を聴いたり、演奏に参加したりします。"クラシック音楽" の室内楽とは異なり、声楽と器楽の両方が演奏されます。
7. カフェ、公共施設のエントランス
trend-antique の音楽は、即興的な要素や、曲芸的な要素を持っていて、カフェや公共の場での演奏にも適しています。比較的音響的にまともな場所が選ばれ、活発な作品などが演奏されます。
8. 大規模なホール
一般的に trend-antique の音楽は、大規模なホールにはあまり適しません。そうした会場での使用を目的に作られた、近代の楽器を用いることで、音響的に解決される場合もありますが、実際に効果を上げるかどうかは演奏者によります。

F. Recommendation / 推奨する環境

1. 静かな環境
"trend-antique" を退屈せずに聴くためには、騒音の少ない静かな環境が最適です。騒音は、音楽の細やかなニュアンスをかき消し、空間を表現する残響を打ち消してしまいます。これらは "trend-antique" の音楽を、決定的につまらないものにしてしまう可能性があります。
2. "オーディオ的" に組まれた再生装置
"trend-antique" を楽しむには、2足3文の安い装置でも構いませんが、それでもオーディオの基礎的な考えに沿って整えられているとよいでしょう。そのことにより、小さなヴォリュームでも十分に響くようになり、音の質感がはっきりとします。もちろん、ハイエンドな装置で満足できる音質を備えてもいます。
3. アルファベットに対する知識
"trend-antique" では、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ラテン語などの言語を扱います。全ての習得は困難ですが、日本語化されないソースも多いので、タイトルや基本表記などは意味の予想がつくと良いでしょう。

G. To make an atmosphere / 雰囲気の演出

1. 場の雰囲気
音楽を聴く "場の雰囲気" は、音楽を構成する重要な要素の1つです。"本来演奏されるべきところ" ではなくても構わないのですが、良さを打ち消してしまうような場では、とてもつまらなく聞こえてしまうかもしれません。"trend-antique" を聴くのに推奨できる場には、典型的な2つがあります。
2. モダンな場
クリーンで現代的であり、程良い白熱灯照明や、あまり強く日の差さないお昼といった、ともすれば仕事に最適な場です。音楽も心地よいモダンな側面が前面に出て、リラックスしたリッチな気分になることができます。
2.1. モダンな場の演出
モダンな場は、文字通り現代の生活の1シーンであり、特別なことをする必要はありません。しかし、強すぎる日光の差し込みや、換気扇・冷蔵庫・機械時計・コンピュータなどの生活音には、気を配った方がよい場合もあります。
2.2. 白熱灯
白熱灯を用いる際には、立体感のある複数の光源を用いて、十分に明るくすることをお進めします。お昼に軽くカーテンを閉め、室内を白熱灯で明るくするのも良いかもしれません。
3. アンティークな場
やや薄暗く、瞑想的な雰囲気の場です。17〜18世紀のイタリア・フランスのカトリック系宗教音楽やオペラ作品を聴く際に効果的で、それらの音楽の神秘的で土着的な響きが際立ち、感動的な癒しを得ることができます。
3.1. ろうそくによるアンティークな場の演出
17〜18世紀の音楽に求められる聴取環境を "演出するもの" として、ろうそくによる照明はお薦めできます。ろうそくは "夜" や "闇" を生み出します。これは、輪郭と色彩の視覚情報を減らし、聴覚に意識を向けるという点で、単なる懐古趣味とは異なる重要な問題です。
3.2. "明るすぎる照明" の問題点
強く鮮明な視覚刺激は、聴覚に対する意識を薄め、音楽にはより大きな音量が、舞台にはリアリズムが求められるようになります。しかし、それらは、17〜18世紀の音楽が目指す【 現実を超えた幻想の美 】や【 神秘的なニュアンス 】を、非常に馬鹿馬鹿しいものにしてしまう側面があります。
3.3. ろうそくの作用
ろうそくの明かりと闇の中で音楽を聴くと、太陽の光や蛍光灯のもとで聴いていた時には、あまり知覚されていなかった音が、とても【 色彩豊か 】に聞こえるようになり、人の歌唱・楽器の音が【 より雄弁 】に語り始めます。
3.4. 光の遮断
遮光は重要な問題です。厚めのカーテンなどで遮光し、しっかりと暗くします。外から洩れ入る街灯の弱い光だけでも、ろうそくによる視覚効果は半減します。

H. Audio tips / オーディオのヒント

I. Self performances / 自分で演奏する

1. プロフェッショナルへの委任
"trend-antique" では、原則的には、音楽実践を全面的にプロフェッショナルに委任します。"作曲演奏の芸術的営為" により近づくために、音楽実践を必須とする "クラシック音楽" や "古楽" とは異なり、上品な "聴き手" として音楽を消費する "trend-antique" では、必ずしも泥臭い技能習得をする必要はありません。
2. アマチュアによる音楽実践
しかし実際には、音楽実践の経験や知識、例えば、ファクシミリ解読、歌唱法、鍵盤楽器奏法、弦楽器奏法、作曲技法、語学的知識、史学的知識、などは、"聴き手" として音楽を消費する上でも、有用なものになります。もし、"trend-antique" をとても気に入ったなら、時間をかけて挑戦するとよいでしょう。
3. 音楽習得の構造
"trend-antique" を担う音楽家たちの経歴を観察すると、初等教育として "クラシック音楽" のモダン奏法を学習し、高等教育として "古楽" の歴史的奏法を学習し、その上で、新たな "trend-antique" 的スタイルを開拓します。現在のところ "trend-antique" に基づく初等教育メソードは開発されていません。

J. Text and Memorization / テクストと記憶

1. 中心にあるのはテクスト
"お先に音楽、それから言葉 [ をつける ] " がジョークであるように、"trend-antique" の音楽は、言葉のために存在します。言葉に存在感を持たせ、言葉を記憶に留めるための1つの手段として、音楽が用いられるのです。
2. 声楽の優越
当然、"trend-antique" の音楽で、メインとなるのは声楽です。器楽はあくまで、"楽器だけで演奏される" 付随的なジャンルであるに過ぎません。
3. 記憶のための装置
"trend-antique" の音楽は、最終的には、"テクストの記憶のための装置" として作用します。聴き手は、歌われるテクストの意味を理解するだけに留まらず、暗記して記憶に留めようと努めます。
4. 理解よりも記憶を優先する
テクストの意味を即座に理解できない人にとって有益なことは、意味の理解よりも、原文の記憶のほうを、むしろ優先させることです。外国人の読み手である場合、たとえ対訳があっても、まずは原文を追うべきです。

K. Techniques of criticism / 批判的な諸方法

1. 批判的であること
秘められた可能性が多く存在する一方で、結果的にクオリティの至らなかった作品もまた、多く存在します。批判的であることは、小さなくだらなさへのストレスによって、時間と情熱を失わないために必要です。
2. 不要な音楽を捨てること
好奇心からいたずらに蒐集するのではなく、不要な音楽を捨てる、という習慣は、優れた批判的な道具の1つです。次に、その方法を示します。
2.1. 多様性とクオリティ
多様性とクオリティは全く別のものです。私たちは、多様性を求めはしますが、クオリティの至らない多様性を擁護すべきではありません。
2.2. 抜けきれなさ
小奇麗なクオリティにまとめられてはいても、聴いていて心から楽しみきれない、という場合があります。もし優れた音楽家であったなら、そこに有無を言わせない魅力を彫り込むことができたでしょう。
2.3. 先入観による拘束
観念的予測から、これは素晴らしいものであるに違いない、と思い込んでしまうと、実際のクオリティや自分の趣味に反して、無理に楽しもうとしてしまいます。また逆に、これは悪いものなのだ、と思い込むこともあります。
2.4. 中だるみ
制作の際に細部まで徹底的に熟考しきれなかった場合、客寄せの斬新さを一部に取ってつけたような場合には、中だるみをすることがあります。その制作の、本来的な水準はどこなのか、ということから考えはじめるとよいでしょう。
2.5. 刷り込み
ある曲について、最初に聴いた制作のイメージが、その曲のイメージとして刷り込まれると、他の制作を聴いて比較した時に、前者を過大に評価してしまうことがあります。
2.6. おまけの評価
希少性、アートワーク、歌手、など、制作の色々な要素のうち、1つないし、いくつかだけが突出して優れている場合、優れていない要素もおまけで評価してしまおうとしてしまいます。これは情熱の倦怠をもたらします。
2.7. 未開眼
はじめは漠然としていたものが、ある時から開けたように魅力的に聴こえはじめることがあります。原因としては、なんとなく聴き流していた、他の人の良い評価に頼りきっていた、などがあります。
2.8. 趣味の相違
最終的に、趣味が合わない、ということも頻繁に起こります。時間の無駄かもしれませんし、趣味は異なるけれども評価できるかもしれませんし、長い未開眼の時期なのかもしれません。
3. 行き過ぎて批判的であることの問題点
逆に、批判的であることが行き過ぎると、満足し得る音楽が少数に限られてしまう、趣味的に孤立してしまう、などの問題点があります。くだらない音楽については、切り捨てつつも、寛容でなくてはなりません。