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GRISELDA - SCARLATTI
[ 2009-10-19 ]
グリゼルダ - アレッサンドロ・スカルラッティ

A. スカルラッティ氏の音楽劇 "グリゼルダ" のリブレットの日本語訳です。台本詩人はアポーストロ・ゼーノ氏です。

オリジナルのテクストは HMF のCD ( HMC 901805.07* ) 、および SACD ( HMC 801805.07* ) を参照しました。harmonia mundi FRANCE は、これらのテクストを public domain であるとしています。

Japanese translation of "Griselda", dramma per musica. Original Text: Apostolo Zeno. Music: A. Scarlatti. HMC 901805.07* (CD) / HMC 801805.07* (SACD), HMF.

[ INDEX ] - [ GRISELDA ] - [ CD1 ] - [ CD2 ] - [ CD3 ]

Introduction :

* 1 : "グリゼルダ" / "GRISELDA" ( 1721, Roma )

* 2 : 登場人物たち / Personaggi

* 3 : 台本と音楽 / Libretto & Music

* 4 : トラック・インデックス / Track index

* 5 : 翻訳者のコメント / Translator's comments

* 6 : 改訂履歴 / Revision history

Texts & translations :

* I : 第1幕 / ATTO PRIMO

* II : 第2幕 / ATTO SECONDO

* III : 第3幕 / ATTO TERZO

GRISELDA / グリゼルダ ( 1721, Roma )

"グリゼルダ" は、A. スカルラッティ氏の最後のオペラです。人物をストレートに、しかし、老練で緻密な作曲を用いて、印象深く描き出します。全編を通して、悲劇的で真面目で、風格のある雰囲気が保たれています。

王妃グリゼルダは、貧しい生まれであることから、シチリアの人々から忌み嫌われ、15年の結婚生活の後に、追放されます。しかし、その後も夫への忠実を貫き、つらい日々の後に、再び、王妃の座に返り咲くまでを描く物語です。

Personaggi / 登場人物

1. GUALTIERO : グァルティエーロ
シチリア王国の王。30代半ば。王ゆえの傲慢さは鼻につきますが、それでも理解のある、賢明な君主であるようです。政治力はあまり強くなく、( 具体的に登場はしませんが、) 有力貴族たちに手を焼いているようです。

GUALTIERO は、聞き慣れない響きですが、北方の Walter のイタリア語形です。

2. GRISELDA : グリゼルダ
シチリア王国の王妃。30歳付近。しがない羊飼いの出ですが、15年以上にわたる風当たりの強い宮廷生活が、それに相当する風格を持たせています。謙虚で誠実な女性である一方、ややヒステリックな傾向も見せます。
3. EVERARDO : エヴェラルド
シチリア王国の皇太子。グリゼルダの生んだ2人目の子供 ( 1人目の娘は、何者かに拉致されて行方不明 ) 。3歳だとか4歳だとか、そのあたり。セリフもなく、手を引かれて、舞台に現れるだけの扱いです。
4. OTTONE : オットーネ
政治的には、忠実でとても有能な家臣。30代半ば。やや宦官しい雰囲気もありますが、外見はスマートですっきりとしています。しかし、プライヴェートでは、不器用かつ強引で、ストーカーチック。公私のアンバランス、冷静を装った必死さが、諧謔的な雰囲気も見せます。
5. POPOLI (CORO) : 人々 (合唱)
シチリアの人々の合唱ですが、大衆というよりは、比較的身分の高い市民たちの集まりであるようです。少なくともその意見は、王に対して、意に添わない決断を迫ります。
6. CORRADO : コッラード
プッリャ王国の君主。20代後半。国力的にはシチリアにやや劣るような雰囲気です。コスタンツァの後見人でもあります。年の割に冷静かつ聡明で、登場人物の中では一番まともな人です。
7. ROBERTO : ロベルト
コッラードの弟。10代後半。コスタンツァとベタベタの恋を展開しています。年の割にかなり幼稚ですが、その意味で普通の青年なのかもしれません。
8. COSTANZA : コスタンツァ
プッリャ王国からやってきた新しい王妃。15歳付近。花盛りの時期でもあり、かなりかわいい娘のようです。良く言えば純真ですが、年相応に単純で幼稚でもあります。コッラードに育てられましたが、その生まれは隠されています。

COSTANZA は Constanza の縮約派生の名前で、N がありません。

Libretto & Music / 台本と音楽

台本:アポーストロ・ゼーノ 氏、神聖ローマ帝室の宮廷詩人
ヴェネーツィアのゼーノ家に生まれる。叔父にあたるカーポ・ディストリア司教に文学と修辞法を師事。リナルド・フォン・エステ侯爵の皇太子誕生を祝う祝典劇(1700)の台本によりデビュー。ヴェネーツィアを中心に精力的な文筆活動を行い、国際的な名声を得る。カール6世によりヴィーンに招聘され、帝室宮廷詩人、帝室歴史伝記史家などを歴任。
音楽:アレッサンドロ・スカルラッティ 氏、ナポリ王室の礼拝堂楽長
シチリアのパレルモ生まれ。デビューの翌年に、スウェーデン女王クリスティーナのローマでの宮廷楽長に抜擢された後、ローマおよびイタリア諸都市で名声を高める。ナポリ副王の招聘を受けて王室礼拝堂楽長に就き、多数のオペラを制作。ナポリ、ローマ、ヴィーンを中心に活躍し、オペラ、オラトリオ、セレナータ、カンタータの作曲において特に高い評価を得ている。

Track index / トラック・インデックス


CD1 - [1] Sinfonia
   
ATTO PRIMO

CD1 - [2] recitativo & coro : Gualtiero
   Questo, o Popoli / 今日こそは、諸君よ

CD1 - [3] recitativo : Griselda, Gualtiero
   Eccoti, o Sire / ご覧下さい、陛下

CD1 - [4] Aria : Griselda
   In voler ciò che tu brami / あなたの望む、決意の中に

CD1 - [5] recitativo : Ottone, Griselda, Gualtiero
   Resta, e saprai. / お待ちに。お聞きください。

CD1 - [6] Aria : Gualtiero
   Non sospira l'amor d'un regnante / 嘆きはしない。王の愛は

CD1 - [7] recitativo : Ottone, Griselda
   Regina, se più badi / 女王さま、このままでは

CD1 - [8] Aria : Griselda
   Nell'aspro mio dolor / つらい私の苦しみに

CD1 - [9] recitativo & Aria : Ottone
   Troppo avvezza è Griselda / グリゼルダさまは、あまりに強く

CD1 - [10] Sinfonia per lo sbarco
   
CD1 - [11] Aria : Roberto
   Come presto nel porto crudele / 何と早く、この冷酷な港へと

CD1 - [12] recitativo : Corrado, Roberto, Costanza
   Germani, e ben entrambi / おまえたち... 愛しい2人よ

CD1 - [13] Aria : Costanza
   Bel labbro, ancor non sai / 美しい唇は、まだ知りません

CD1 - [14] recitativo : Gualtiero, Corrado
   L'arcano in te racchiudi / この話は、そのお心にどうか

CD1 - [15] Aria : Gualtiero
   Vago sei, volto amoroso / あなたは美しく、眼差しはやさしく

CD1 - [16] recitativo : Corrado, Roberto & Aria : Costanza
   Omai più non s'indugi / さあ、ぐずぐずせずに

CD1 - [17] recitativo : Corrado, Roberto
   Roberto, i nostri eventi / ロベルト... 私たちの運命は

CD1 - [18] Aria : Roberto
   Non vi vorrei conoscere / あなたを、知らなければよかった。

CD1 - [19] recitativo : Gualtiero, Griselda
   Come! Tu nella reggia / 何と。おまえはこの王宮に

CD1 - [20] Aria : Gualtiero
   Che bella tirannia / この逆らえない魅力

CD1 - [21] recitativo : Griselda, Ottone
   Everardo, o soave / エヴェラルド、そよ風のよう

CD1 - [22] Aria : Griselda
   Di' che sogno o che deliro / 言え!「 これは夢だ、幻だ 」と

CD1 - [23] recitativo & Aria : Ottone
   Con beltà sì proterva / あの方は、気持ちが高ぶり

CD1 - [24] recitativo : Corrado, Costanza
   Son le regie tue stanze / どれも王妃のお部屋です

CD1 - [25] Aria : Corrado
   Non lasciar d'amar chi t'ama / 捨ててはいけない、愛する人を

CD1 - [26] recitativo : Costanza, Roberto
   Pria che d'amarti io lasci / あなたを愛するのを、やめるなら

CD1 - [27] Aria : Costanza
   Voi sospirate / あなたは悲しんでいます

CD1 - [28] recitativo & Aria : Roberto
   Chi vide mai / 誰が受けただろう

ATTO SECONDO

CD2 - [1] Aria : Griselda
   Mi rivedi, o selva ombrosa / 私は戻った。... 薄暗い森よ

CD2 - [2] recitativo : Griselda, Ottone & Aria : Ottone
   Griselda, anima mia / グリゼルダさま、いとしい人よ

CD2 - [3] recitativo : Griselda, Corrado
   Ho in petto una sol' alma / この胸にあるのは、1つです

CD2 - [4] Aria : Corrado
   Agitata da fiera procella / かき乱されて、激しい嵐に

CD2 - [5] recitativo : Griselda, Ottone
   Figlio, o dove t'ascondo / エヴェラルド、どこに隠したら

CD2 - [6] Aria : Griselda
   Figlio! Tiranno! O Dio! / わが子よ! 暴君の父よ! ああ神さま

CD2 - [7] recitativo : Ottone & Aria : Ottone
   Non giovano lusinghe / 媚びても無駄です

CD2 - [8] recitativo : Roberto, Costanza
   Ami forse Gualtiero? / 愛している? まさか、グァルティエーロを

CD2 - [9] Aria : Roberto
   Tu non intendi / あなたは分かっていない

CD2 - [10] recitativo : Gualtiero, Roberto, Costanza
   Dove, o Roberto? / どちらへ、ロベルト殿

CD2 - [11] Aria : Gualtiero
   Luce mia bella / 美しいその目よ

CD2 - [12] recitativo : Costanza & Aria : Costanza
   Sì, con Amor mi sdegno / ああ、アモーレは、嫌いです!

CD2 - [13] recitativo : Griselda
   È deliquio di core / かすんでいく、この気も

CD2 - [14] Aria : Griselda
   Finirà, barbara sorte / やめなさい、むごい運命よ

CD2 - [15] Sinfonia di caccia
   
CD2 - [16] recitativo : Costanza, Griselda
   Sola, se ben tu parti / ひとりでは... 行ってしまうなんて

CD2 - [17] Duetto : Griselda, Costanza
   Non sei quella; eppure il core / あなたは別の人、でもその心は

CD2 - [18] recitativo : Gualtiero, Costanza, Griselda
   De' tuoi begli occhi / あなたの、美しい瞳は

CD2 - [19] Aria : Gualtiero
   Vorresti col tuo pianto / 願うのか、涙とともに

CD2 - [20] recitativo : Griselda, Ottone, Corrado, Gualtiero, Costanza
   Ecco Otton / ここだ、オットーネ

CD2 - [21] Terzetto : Gualtiero, Costanza, Griselda
   Ti voglio sempre odiar / おまえを、いつも嫌いたい。

ATTO TERZO

CD3 - [1] recitativo : Ottone, Gualtiero
   Eccomi innanzi al mio Monarca / いまこちらに、陛下のもとに

CD3 - [2] Aria : Ottone
   Mi dimostra il tuo bel dono / 知らしめる、... 陛下の贈り物は

CD3 - [3] recitativo : Gualtiero, Griselda
   Griselda; al sol cadente / グリゼルダよ、... 日が、沈み去ると

CD3 - [4] Aria : Griselda
   Se il mio dolor t'offende / この悲しみが、お嫌なら

CD3 - [5] recitativo : Gualtiero
   Peno, ma per te peno / つらい... おまえのことは、つらいのだ

CD3 - [6] Aria : Gualtiero
   Ho in seno due fiammelle / この胸に、2つの火が灯る

CD3 - [7] Aria : Roberto
   Come va l'apre di fiore in fiore / ミツバチのように、花から花へ

CD3 - [8] recitativo : Corrado, Roberto, Costanza
   Dunque sei risoluto? / それでは、諦めがついたか

CD3 - [9] Duetto : Roberto, Costanza
   Bella mano / 美しいこの手

CD3 - [10] recitativo : Griselda, Costanza, Roberto, Gualtiero, Corrado
   Con sì pudico affetto / こんな「 慎み深い 」気持ちで

CD3 - [11] Quartetto : Griselda, Costanza, Roberto, Gualtiero
   Non fu mai colpa amor / 決して罪にはならない、愛とは

CD3 - [12] recitativo : Tutti
   Terminate, o ministri / 終えなさい、おまえたち、

CD3 - [13] Coro : Tutti
   Coronatevi di fiori / 載せなさい、花の冠を

Translator's comments / 翻訳者のコメント

音楽の充実度としては第2幕
アリア・レチタティーヴォはともに、第2幕が最も充実しているように感じます。その他の幕でも、CD1 - [13], [15], [18] や CD3 - [2], [6], [9], [11] あたりも、お薦めです。浮き立つようなレチタティーヴォ ( CD2 - [10] の半ば "Pur non mi scopri in viso" といった箇所など ) も魅力的です。
筋書きよりも詩学的可能性
オペラのリブレッティストは、肩書きを見ても分かるように、劇作家というよりも "詩人" です。彼らの仕事は、構成豊かな筋書きを書くことではなく、場面場面で響きのよい台詞を書くことです。美しい台詞を導くためであれば、"ベタな展開" も躊躇しません。
前近代的 "ストレートな生々しさ"
行動の発想や台詞の表現が、残虐であったり、ご都合主義的であったり、浅薄であったりしても、ストレートに描いているのが魅力的です。あの、"型通りのハッピーエンド" の中にも、どこか生の人間らしい、妙なわざとらしさ、いかがわしい保身、手のひら返しの速さ、をしたたかに暗示させています。

Revision history / 改訂履歴

i. 訳文は、問題が見つかり次第、随時修正していきます。

* 2009-10-18 : 第1幕、第2幕の表現を一部修正。

* 2009-10-04 : 全体に渡って表現を修正。

* 2006-08-22 : 第1幕を改訂。主に "..." を "。" や "、" に変更。

* 2006-04-13 : 1箇所、誤訳を発見・修正。

* 2006-03-11 : 1箇所、長い行を分割。

* 2006-03-09 : スペーシング修正。2箇所、長い行を分割。

* 2006-02-26 : レチタティーヴォの押韻を標準サポート。

* 2006-02-24 : 2箇所修正。

* 2006-02-23 : 製本版のスペーシング修正。html版を2箇所修正。

* 2006-02-22 : 製本版のスペーシング修正。html版の誤植を1箇所修正。

* 2006-02-11 : 製本版をフィードバックして第1幕を中心に改訂。

* 2006-02-06 : ステイブル・リリース。

* 2006-02-05 : 全体についてスペーシングなどを改訂。

* 2006-02-04 : 第3幕が完結。

* 2006-02-01 : 第2幕を一部整理。

* 2006-01-30 : 第1幕を全面改訂。

l'autore : Apostolo Zeno / il traduttore : idechi mullaccami

... " TRADUTTORE, TRADITORE. "
... " 翻訳者は, 裏切り者. "

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